住基ネット判決

私自身は住基ネットの構築に関わっていた人間であるので、以下のエントリーについては予断があることは承知した上でお読みください。

金沢地裁は5月30日、石川県の住民28名などが石川県を相手に起こしていた住基ネット訴訟に対し、「住基ネットはプライバ シーを侵害する憲法違反」、「住基ネットは原告らの プライバシーを犠牲にしてまで達成すべきものとは評価できない」として、原告らの個人情報を住基ネットの台帳から削除することなどを命じた。このような判断は、住基ネットから個人情報の削除を命じる全国初のものである。
これに対し、4月28日に名古屋地裁が出した住基ネット訴訟に関する判決では、「住基ネットで国や市町村が提供を受ける個人情報は氏名や生年月日、住所などの本人確認情報に限られており、住民基本台帳法が定めた事務以外の利用は禁止されているため、住基ネットを通じた情報管理自体はプライバシーを侵害しない」とされている。
この真っ向から対立する二つの判決のポイントは、氏名、生年月日、住所、性別、住基コードおよびそれらの履歴の6情報はプライバシー保護の対象になりうるかどうかという点である。金沢地裁はプライバシー保護の対象であると判断し、名古屋地裁は氏名や住所などの情報は、思想・信条とは異なり、絶対的な保護の対象ではないと判断した。もし、プライバシー保護の対象になるのであれば、住基ネットだけでなく各市町村が管理している既存の住基システムも違憲ということになるのだが、この点について金沢地裁はどのような判断をしたのであろうか。住基コードによって国が一律的に情報を管理することはいけなくて、市町村が住民票に記載されている10数いくつの情報(この中には当然、住基ネットに登録されている6情報も含まれている)を個別に付与している独自のコードによって住民の情報を活用するということは許すということなのであろうか・・・・。

私自身は、金沢地裁が自己情報コントロール権を議論の俎上に上げたことは評価するが、自己情報コントロール権の概念をもう少し前向きに捉えるべきなのではないかと思っている。